2022/10/05 (Wed)
「赤と緑と城」Song Storyを公開!
「赤と緑と城」のSong Storyを公開します!著者はKASEKIです。ぜひお読みください!
ある世界では、自分の瞳に何が映っているのか、わかる人がいるらしい。
ある世界では、もう死にたいと思っている人のことを「乾いた人」と言うらしい。
ある世界では、鳥は「泳ぐ」と言うらしい。
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目が覚めた。場所は何もない城のようなところだった。中庭で、一人床に背を向けて寝ている。誰かに見つかって不審者扱いされては嫌なので、とりあえずどこか安全な場所に…と言ってもまだここがどこか分からないからどうしようもない。身体を起こしてみると、人がいなさそうな城であることがわかったので少し安心した。ただ、いつ人と遭遇するかも分からない。早く逃げよう。
ーあなたは、ここで死ぬ運命です。そこの塀に登り、今すぐ飛び降りることをおすすめします。
こんなこと言えば、母親に「テレビの見過ぎ」「漫画の読みすぎ」と怒られるかもしれない、いや絶対そうだろうが、僕は今確かに、ナレーションのような女の人の高い声で「今ここで死ぬ運命」だと聞いた。そんなわけないか、空耳だな。
ー空耳ではありません。私は、あなたに投げかけているのです。さあ、早く飛び降りなさい。
優しい声の命令だった。一瞬「それもいいな」と思ったことは置いておいて、僕は、死にたくない。死にたくないよ。
ー自分で死にますか。
最初の見知らぬ「声」が聞こえてから数分、僕は生と死ではなく死の中のAとBの選択を迫られている。死ぬなんてこと、考えてない。
ー『ある世界では、自分の瞳に何が映っているのか、わかる人がいるらしいのです。ある世界では、もう死にたいと思っている人のことを「乾いた人」と言うらしいのです。ある世界では、鳥は「泳ぐ」と言うらしいのです。』。この話を聞いたことがありますか。その『ある世界』とは、天国のことです。ほかにも、天国では今の世界と同じで「空」も「海」も「山」もあるそうです。もちろん「月」と「太陽」、それに「星」もあります。どうですか?楽しそうではないですか?
いま、自分は孤独だ。助けを求められない。そっか、自分は死にたいのかもな。勉強も、青春も、ほど遠い生き物だったから。いっそ見知らぬ「声」の言う通りにしてもいいのかも。そっか。
飛び降りたら、もう終わりだね。人は、忘れられた時が寿命の果てらしい。
最期に、歌を歌おう。こんなときにピッタリの歌、知ってる。歌を歌うのも最後。歌は「楽しむ」ものだと自分は思っているから。
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「赤と緑と城」
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ーお疲れ様。きっと、これからもいいことがありますよ。おやすみなさい。
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悪夢だ。
悪夢だ。
息が荒い。
なんだ、夢か。
「死」は、怖い。
でも、ときには讃えられる「死」だってある。
僕は、讃えられて死んでいきたい。
周りの人が涙を流しながら。
愛し、愛されながら。
終わり